インフレに備えた運用がより必要な時代へ

taisyokukin

公的年金には、古くから物価スライドの制度があります。

その昔、オイルショックによって物価が高騰した時代、モノの値段が上がっていくのに年金額が据置きだと年金生活者は生活が苦しくなってしまうので、物価上昇に応じて年金額を増やす仕組みが導入されました。その後、平成元年度から完全自動物価スライド制に移行し、消費者物価指数の前年比上昇率に連動して年金額を改定する仕組みになりました。

しかし、基本的には物価上昇を想定していた物価スライド制でしたが、平成11年に物価が下落に転じ、3年連続の物価下落分を年金額に反映させずに据え置く措置がとられたのです。

このときの物価下落分1.7%がなかなか解消されずに溜まっていき、平成24年度では本来よりも2.5%高い年金額の支給になってしまったため、平成25年10月から1%の引下げが行われ、さらに平成26年4月から1%、平成27年4月から0.5%の引下げを実施し、年金額を本来の水準に戻すことになっています。

ちなみに、平成26年4月分からは、消費者物価指数の上昇率0.4%よりも低い名目賃金上昇率0.3%が年金額改定に反映され、マイナス1%に0.3%をプラスしたマイナス0.7%が改定率として適用されています。アベノミクスや年2%の日銀のインフレターゲットなどが今後も奏功し、物価上昇・賃金上昇の流れが続くなら、平成27年4月の年金額の引下げ幅も縮小するかもしれません。

平成27年4月までの3段階の年金額引下げで特例水準(2.5%)が解消され、年金額が本来水準となると、平成16年度の年金制度改正で導入されながらも一度も発動されていない「マクロ経済スライド」が適用される可能性が高まります。

そもそもマクロ経済スライドは、世代間扶養の仕組みであるわが国の公的年金の制度を将来にわたって持続可能な制度にするためにも、年金額の改定に少子化と高齢化の進展分を反映させようと考えたものです。

従来の年金額の改定率である賃金(物価)上昇率からスライド調整率(=公的年金全体の被保険者の減少率+平均余命の伸びを勘案した一定率)を差し引いたものを年金額の改定率にしたのです。平成16年度当時、スライド調整率は0.9%程度になるといわれており、単純計算でも、0.9%以上賃金(物価)が上昇しないと年金は増えないわけです。

賃金(物価)の上昇率が0.9%に満たない場合は、年金額の改定率は±0%、また、賃金(物価)が下落した場合は、その下落分だけ年金額に反映し、マクロ経済スライドは発勤しないことになっています。

したがって、簡単にいえば、これからは賃金(物価)が上昇しても、それよりも低い率でしか年金額は増えていかないということになります。少なからず年金額にインフレリスクが伴うようになったわけです。前項で述べた年金額を増やす方法のいずれかを実行したり、インフレリスクもきちんと意識したポートフォリオ運用を実行したりすることが、これからはより重要になるといえるでしょう。

(続く)